ベランダ手すり「乗り越えにくい設計に」 都に報告書提出
- 2018/2/15
- くらし
子どものベランダからの転落事故を防ごうと、消費者団体や有識者、事業者団体らで作る東京都商品等安全対策協議会(会長・越山健彦千葉工業大学教授)は2月15日、手すりの安全対策を盛り込んだ報告書をまとめた。メーカーに対し、手すりの高さを今の基準よりも高くすることや、形状を工夫することなどを提言。国や都、消費者団体などには消費者への実効性のある注意喚起を求めた。都内では2007年度以降、12歳以下の子どもの転落事故が145件起きていて、2人が死亡するなどしていた。
法令や基準で定められている手すりの高さは「1100ミリ以上」。しかし、高さ1100ミリの手すりを用いた実証実験では、2歳児は乗り越えられなかったものの、4歳児ではほとんどが笠木(手のかかる部分)に手が届き、乗り越えてしまった。
協議会は報告書の中で、「手すりの高さだけで乗り越えを防止することには限界がある」と指摘。メーカーに対し、安全性を考慮して手すりの高さを1200ミリ以上とする▽手すりを前にずらす対策や形状を工夫する▽よじ登らなくても外が見える構造にする-といった乗り越え防止対策の検討を求めた。
また、国や都、消費者団体、業界団体が一丸となって消費者への注意喚起を行うよう要請。手すりに注意喚起シールを貼る▽入居時の説明を工夫する▽子育て世代の利用が多いSNSを活用した情報提供を展開する-など実効性のある取り組みを提案した。
報告書を受け取った東京都の三木暁朗・消費生活部長は「製品のデザインを工夫することで何らかの事故防止効果を出せることが分かったことは大きな成果。調査結果を参考に製品開発や安全基準の検討をお願いしたい。対策自体はこれからがスタートだ」とコメント。
日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会の釘宮悦子氏は「設置済みの手すりの対策についても考える必要がある」と指摘した。
事業者団体からは、リビングアメニティ協会の市川貴氏が「この提言を他団体と共有しながら(対策を)検討していきたい」、日本アルミ手摺工業会の久米克昌氏が「ベターリビングなどと連携し平成30年度事業計画の中にも盛り込んでいきたい」などと発言。各業界連携のもと対策の検討に着手する方針が示された。
越山会長は「協議会はこれまで子ども用歯ブラシやコイン形電池、ブラインドのひもなどの安全対策を検討してきた。これらは欠陥や法令・基準違反のない製品だったが子どもの事故が起きていた。法的な拘束力のない中で事故のリスクを減らすには、産業界、消費者など多くの関係者の理解を得ることが必要になる」と強調した。
都は報告書をもとに国や関係団体に対策を要望するとともにリーフレットを作成して注意喚起を展開する方針だ。