肥満軽視社会に警鐘 米消費者団体、慢性疾患並みの扱い求める

肥満がもたらす影響を過小評価し、適切な治療を受けない患者が多いなどとして、米国の消費者団体、全米消費者連盟(NCL)は7月7日、治療可能な慢性疾患として肥満を取り扱うよう政府に提言した。NCLは「肥満を軽視する米国人の考え方を転換し、誰もが慢性疾患と同等のケアを受けられるようにする必要がある」と訴えている。

NCLは文献調査をもとに、報告書「新しい患者中心の肥満行動アジェンダ」をまとめた。それによると、医学会が肥満を「治療が必要な慢性疾患」と定義し、治療法も大きく進化しているにもかかわらず、米国人の4人に3人は自身の意思の弱さが肥満の原因と考え、病気であることを認識しないという社会的風潮が根強いことがわかった。

また、専門医のケアを受けている肥満患者は全体の10%にとどまり、多くの人が医療機関にかからず、十分な治療を受けていないことが判明。さらに、国内に1億800万人いるとされる成人の肥満者のうち病気との診断を受けた人はおよそ3000万人と少なく、投薬治療が必要と診断された人のうち薬を服用している人はわずか2%であることもわかった。

NCLは「肥満は健康と福祉のほぼすべての側面で悪影響を及ぼし、2型糖尿病や心臓病、ある種のがんに至るまで、230を超える慢性疾患を悪化させる要因となっている」と指摘。肥満に関連した疾患で毎年約30万人が早死にし、治療費を含めた経済的損失は年間1.72兆ドルに達すると報告した。

肥満治療へのアクセスを確立するには、偏見に対する意識改革、医療従事者への教育、時代遅れの政策の転換など全方位的な施策が必要だとし、▽治療可能な慢性疾患であるとの認識を広めるための肥満の再定義▽太りすぎに関するカウンセリングマニュアルの作成▽肥満治療法の可決▽差別を受けない肥満患者の権利章典――など9項目を提起した。報告書では、医師が患者の立場を尊重しない言葉で肥満を指摘し、不快感や萎縮を与えていることも指摘された。

NCLは肥満ケア・アドボカシー・ネットワーク(OCAN)と連携し、昨年12月に円卓会議を開催。公衆衛生専門家や肥満治療支援団体などと肥満政策に関する科学的評価を行うとともに、患者目線に焦点を当てた文献レビューをおこなうなどして報告書を取りまとめたという。

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