埼玉大生、知事に「遊んで学ぶ消費者啓発」提言 被害を疑似体験
- 2020/11/13
- くらし
埼玉大学の学生と大野元裕知事による意見交換会が11月12日、開かれ、ゼミ生が3つのテーマで政策提言を行った。消費者啓発をテーマに研究報告した経済学部・江口幸治准教授ゼミ生は、若者の間で人気が高まるボードゲームに目を付け、消費者トラブルを疑似体験できるすごろくゲームの活用を提言。大野知事は「そのまま使えるアイデアだ。消費者問題だけでなく様々なものに活用できる」と評価した。
埼玉大生による知事への政策提言は2010年から始まり、今回で11回目。県政に反映された提言もあり、思わず開封したくなるようなデザインを施した「圧着式の子宮頸がん検診受診勧奨はがき」やドライバーに歩行者優先を呼びかける感謝メッセージ型反射式電柱幕「止まってくれてありがとう」などが採用された。
今回の提言では、江口ゼミ生6人が「若者よ、遊んで学べ!~アクティブ消費者啓発~」を報告。県内で増加傾向にある若者被害への対策として、自作のすごろく教材の活用を訴えた。すごろくには「SNSで出会った人に騙されて宝石を買わされた。10万円払う」など若者が巻き込まれやすいトラブルが散りばめられ、所持金の増減とともに悪徳商法を疑似体験しながらゴールを目指す内容。プレイ時間が長くなり過ぎないよう工夫したほか、逆転要素を盛り込むことで白熱した試合展開を用意したという。
また、すごろくゲームのほかに目の錯覚を利用した「消費者啓発トリックアート」を提言。商業施設の壁面などに描くことで、消費者ホットライン188番を強く印象付ける狙いだという。ゼミ生は「成人年齢引き下げにより若者の消費者問題は一層増加していく。最後に自分の身を守れるのは自分自身であり、その力を養うためには自分自身の問題として取り組む必要がある」として、若者自身が主体的に取り組む「アクティブ消費者啓発」の活用を提言した。
これに対し、大野知事は「そのまま使えるアイデアだ。県は高齢者被害の防止に注力してきたが、若者トラブルにも目を向けて啓発をやっていかなければならないと気付かされた」とし、疑似体験を通したアクティブ消費者啓発の手法は幅広く応用できると評価した。
そのほか、工学部・久保田尚教授ゼミ生がモビリティ・マネジメントとトランスセオレティカルモデルを駆使して高齢者事故を防ぐ「バズらせよう!安全ドライブ #安全運転チャレンジ」を提言。経済学部・齋藤友之教授ゼミ生はサテライトオフィスを活用して県庁職員の働き方を改革する「テレワーク推進のための三位一体改革」を提言した。
埼玉大学の坂井貴文学長は「政策提言は学生にとって貴重な学びの場。社会に出てからは誰も正解を知らない課題に取り組み、解決していく力が必要になる。実際の社会課題を扱うことでこうした難しさを体験したと思うので、この経験を今後に生かしてほしい」と学生らにエールを贈った。