公益通報者保護法、実効的改正今度こそ 消費者団体が決意表明
- 2020/2/6
- くらし
公益通報者保護法の実効的な改正を求める院内集会が2月4日、開かれた。前日には自民党消費者問題調査会の公益通報者保護制度に関するプロジェクトチーム(宮越光寛座長)が提言の取りまとめを行い、必要な手続きを経て、改正案が通常国会に提出される見通し。集会で消費者団体は「現行法のもとで企業不祥事が相次いできたが、やっと法改正までたどり着いた。実効性のある改正を今度こそ実現させよう」と呼びかけた。今後は通報者への報復に対する罰則規定の獲得を目指して運動を展開していく。
衆院議員会館で行われた院内集会は日本弁護士連合会、全国消費者行政ウォッチねっと、全国消費者団体連絡会などの共催。消費者、弁護士に加え、消費者問題に取り組む国会議員10人や議員秘書が参加した。
集会では、内部告発後に執拗な嫌がらせを受けた金沢大学医学部の小川和宏准教授が、通報以降14年間の係争状況を報告。NACSコンプライアンス経営研究会の大塚喜久雄さんは企業不祥事を例にあげ現行法の問題点を指摘した。海外法制度の動向報告などに続き、消費者団体が決意表明をおこなった。
ウォッチねっとの拝師徳彦弁護士は「自民党の取りまとめはかなり踏み込んだ内容となったが、通報者に対する不利益取扱いを行った者への行政罰や刑事罰の規定がない」と指摘。「このままでは通報者が不利益取扱いを受けた時、自分で労力をかけて裁判を戦わなければいけない」とし、罰則規定の獲得を目指して運動を展開していくと強調した。
全国消費者団体連絡会の浦郷由季事務局長は「経済界は罰則規定の導入について何を恐れているのか。コンプライアンスや内部通報体制をきちんと整備していれば何も恐れることはないはず。現行法のもとで企業から不利益を受けている人がいる。1人で裁判を戦っている人もいる。企業は労働者を、政治は国民を守ってほしい」と訴えた。
また、欠陥住宅被害全国連絡協議会幹事長の河合敏男弁護士は、元一級建築士による耐震強度偽装事件やニチアス建材耐火性能偽装問題など複数の事件を列挙し、「欠陥住宅は隠れた瑕疵が問題となるが、建築に関わった者でなければその瑕疵を知り得ようがない。大地震で建物が倒壊して初めて構造欠陥が発覚し、事件になる。公益通報なくして救済する手段がない」と語った。
市民のための公益通報者保護法の抜本的改正を求める全国連絡会の河村真紀子代表幹事は「安全安心な市場、良質な市場こそが競争の質を高め、消費者・事業者双方にとって長期的な利益をもたらす唯一の道である、というのが消費者庁創設の理念。この唯一の道に向けて今国会で法改正が確実に行われ、通報者が守られ、安心して公益通報ができ、市民・消費者も権利が守られる実効性の高い法律を実現させよう」と呼びかけた。
2006年4月の同法施行以降、本格的な改正作業に入るのは今回が初めて。自民党による取りまとめの主な柱は▽国・自治体を含む事業者に内部通報体制の整備を義務付ける(中小事業者は努力義務)▽窓口担当者・役員に罰則付きの守秘義務を課す▽通報者の範囲に退職者(退職後1年以内の通報)、役員を含める――など。通報者への不利益取扱い(報復・嫌がらせなど)への対応については「関係機関が連携して通報者の負担軽減及び不利益取扱いの是正に向けた取り組みを進める」との文言になり、消費者団体や消費者委員会が求めてきた「行政措置・刑事罰の導入」からはトーンダウンした形となっていた。