家具転倒でイケアが和解 遺族が消費者団体に100万ドル寄付
- 2020/1/7
- 海外
リコール中のたんすが転倒して米カリフォルニア州の2歳男児が死亡した事故をめぐり、遺族の弁護士は1月6日、スウェーデンの家具小売り大手イケアが4600万ドル(約49億6000万円)を支払うことで和解したと発表した。子どもの不法死亡訴訟としては米国史上最高額だという。遺族は訴訟を支援してきたKids in Danger、コンシューマー・リポート、アメリカ消費者連合(CFA)の消費者3団体に100万ドル(約1億800万円)を寄付することを表明した。
イケアは2016年6月、安定性に問題があり、壁に適切に固定しないと倒れる恐れがあるとして、人気商品の「MALM」シリーズを含むたんす2900万個のリコールを発表。リコール発表までに6人の子どもの死亡事例が報告されていた。
今回の訴訟は、リコール着手後の2017年5月に起きた事故をめぐるもの。カリフォルニア州で2歳男児がたんすの下敷きになり、首を負傷して窒息死した。弁護士の発表や報道などによると、両親は2008年に低価格のイケア製たんすを購入。リコール対象製品だったことや死亡事故の危険性があることを知らずに使用を続けていた。両親はイケアからの連絡メールが届いていなかったと語り、ケーブルテレビを契約していないため関連ニュースも見ていなかったと主張。遺族の弁護士は「イケアはたんすの所有者に効果的な警告を発していなかった」と指摘した。
リコール対応の遅れは当時から消費者団体が指摘しており、CFAなどは2017年1月、改修率が3%にとどまっているとして同社に対策を求めていた。
訴訟では和解金の支払いに加えて、事故防止策が盛り込まれた。イケアはたんすの安定性基準を要求している擁護団体Parents Against Tip-oversとの意見交換やSNSを活用した所有者への情報提供の拡大に取り組むことを約束し、遺族は家具転倒事故に警鐘を鳴らし続けてきた消費者3団体に総額100万ドルの寄付を表明した。
コンシューマー・リポートのマルタ・テラードCEO兼代表は「遺族からの寄付に感謝する。家具の安定性テストの実施や厳格な安全基準を求める運動に役立てていく」とするコメントを発表。今なお数百万人が問題のたんすを使い続けているとして、「イケアのリコール案件を警告し続け、これ以上悲劇が起きないようにしていく」と強調した。
販売から10年以上が経過する製品が含まれることなどから、リコールは難航している模様。イケア広報はリコール済み製品が約140万個にとどまることを明らかにしている。