多重債務者、減少から横ばいへ 個人間融資など新手口に警戒感
- 2019/12/9
- くらし
2006年12月の改正貸金業法の成立以降、減少してきた多重債務者数の横ばい傾向が鮮明になった。金融庁などのまとめによると、今年9月末時点で消費者金融などから5件以上の借り入れがある多重債務者は3年連続で9万人。3件以上の利用者は120万人となり、17年3月末時点の115万人から5000人の微増となった。改正法による利用者保護が進む一方で、最近は個人間融資や給与ファクタリングなど新たなヤミ金融手口が横行しており、消費者庁などは「引き続き注視が必要だ」としている。
改正法成立時の多重債務者は、5件以上の利用者が171万人、3件以上の利用者が443万人(5件以上借り入れ含む)だった。2010年の改正法完全施行などを経て利用者保護が進み、17年3月末には法成立以降で過去最少を記録。5件以上の利用者が9万人(07年時の5%)、3件以上の利用者が115万人(同26%)にまで減少した。それ以降は横ばいが続き、3件以上の利用者については微増に転じるなどしていた。
多重債務問題を巡っては近年、銀行カードローンによる自己破産問題が浮上。直近ではSNS上で個人同士の貸し借りを装う個人間融資や、給与を債権とみたてて個人に貸し付ける給与ファクタリングといったヤミ金融事案が横行し始めていた。
12月9日に金融庁で開催された懇談会で、新里宏二弁護士(日本弁護士連合会消費者問題対策委員会幹事)は「銀行カードローンの自己破産は、取り組みが進むなどして今年に入って増加傾向にブレーキがかかってきた」とする一方で、給与ファクタリングなどの新たなヤミ金融手口を懸念。「中小零細企業経営者を狙った偽装ファクタリングが摘発されたことを受け、個人を狙った給与ファクタリングにヤミ金融業者が流れ込んでいるようにみえる。給与は本人への直接払いが原則。譲渡できないはずであり脱法行為といえる。多重債務問題の解決はいかにヤミ金融を抑え込むかが重要であり、対策を進めてほしい」と求めた。
また、全国消費生活相談員協会参与の渡邉千穂さんは「電話の自動音声で融資を持ちかける事例が寄せられている」と報告。学生ローンについても「適当な理由を付けて申し込めば、借り入れができてしまう現状がある」とし、店舗窓口での学生へのカウンセリングと適正な与信審査を要望した。
金融庁はSNS上で注意喚起を行うなど新手口への対応を強化しており、個人間融資の悪質な書き込みに対して個別の注意メッセージを送るなどしている。懇談会では成年年齢引下げやギャンブル依存症への対応も提起され、今後も多重債務者の動向と対策の効果を注視していく方針だ。