「海なし県」で海洋プラごみ考える講演会 当事者意識で行動を
- 2019/9/6
- くらし
海に面さない埼玉県で9月5日、海洋プラスチックごみ問題を考える講演会が開催された。海洋ごみの約7割が川などを通って流れ込んだ陸域のごみとされ、その多くがプラスチック製。講演した環境NGO「JEAN」の小島あずさ事務局長は「今あるごみをいかに回収するか、増やさないためにどうするか。当事者意識を持ち、消費行動を変えてほしい」と呼びかけた。参加者からも早急な対策を求める声があがった。
講演会「プラごみ削減で海をまもる」は九都県市首脳会議「海洋プラスチックごみ問題検討会」の主催。さいたま市内で開催され、ごみ問題に取り組む消費者など約200人が参加した。
海洋環境研究の第一人者で、埼玉県環境科学国際センター総長の植松光夫さんは、海洋に流出するプラスチックごみ発生量の国別ランキングを紹介した。第30位の日本は年間6万トンが海に流出しているとし、「国民一人当たりに換算すると約500グラムになり、年間でペットボトル約25本分を直接海に投げ捨てているイメージ。米国(340グラム)のほうが意識が高いといえる」と指摘した。また、プラごみ削減に向けた国際的な枠組みが出来つつあることを説明する一方で、「マイクロプラスチックの発生原因や環境影響、人への健康影響など明確に分かっていないのが現状。しかし、放っておいていい訳ではなく、個人としても意識して考えてほしい」と呼びかけた。
JEAN事務局長の小島あずささんは、30年間にわたり海ごみ問題に取り組んできた経験をもとに、連日新たなごみが発生している現状を報告。また、海洋ごみが大量に流れつく日本海・東シナ海の沿岸エリアでは、過疎化や人口減少、処理費用の負担増により地域における回収活動が疲弊しつつあると指摘した。小島さんは「現実を正しく知って、自分もこの問題に関係する当事者の一人だという意識を持つことが大事だ」と消費者に行動を呼びかけるとともに、「個人の行動に期待しているだけでは問題は改善しない」として、社会の仕組みやルールの変革を訴えた。
会場からも「問題解決には製造者責任に切り込む必要がある」、「(政策目標の期限として掲げられている)2050年までまだ30年もある。もっと早くやるべきだ」、「この地球に生き残れるのかという段階にきている。この問題を知らない人はいない状況にあるので、実践につながる啓発や教育をお願いしたい」との声があがった。
九都県市首脳会議では、クジラがペットボトルを前に困った表情するというデザインの啓発ポスターを作成し、首都圏の駅やコンビニ、スーパーなど1万4000カ所で掲示する予定。発生抑制や適正廃棄を呼びかけたいとしている。