劣悪な就労環境を強いられたことで化学物質過敏症に罹患し、重大な健康被害を被ったとして和歌山県の男性が花王を訴えていた裁判で7月2日、東京地裁は労働環境を改善しなかった花王の安全配慮義務違反と化学物質過敏症との間には因果関係があると判断、劣悪環境ではなかったとする花王の主張を退け、原告の主張を一部認める判決を下した。就労環境と化学物質過敏症との関係を認める判決は珍しく、健康被害防止に役立つ内容、と消費者団体は注目している。
この裁判は2013年9月に東京地裁に提訴された。
花王に正社員として勤務していた原告(男性)が、「劣悪な就労環境」のもとで業務を強いられ、有害化学物質に暴露され続けた結果として、「化学物質過敏症に罹患」「重篤な健康被害を被った」「退職せざるを得ない状況に追い込まれた」と訴え出た。花王に対し、雇用契約上の安全配慮義務違反及び不法行為責任に基づき約4700万円の損害賠償を求めていた。判決では約2千万円の支払いを花王に命じた。
原告男性は提訴当時46歳。
花王の和歌山工場で85年から2012年まで正社員として勤務。うち93年から2001年までの8年間、クロロホルムをはじめ、多種多様な有害化学物質を多量に取り扱う検査分析業務に従事した。
訴状では当該職場環境は、「化学物質発散防止措置が十分とられていなかった」「就労場所はほとんど換気がなされない状況だった」「強制排気装置などの化学物質暴露防止装置が不十分だった」「有害廃棄物や廃液の処理も極めてずさんだった」などの状況だったという。
そのような環境下、多量の有害化学物質を暴露され続けたことで…(以下続く)
(本紙「ニッポン消費者新聞」8月1日号より転載)
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