新井ゆたか長官インタビュー 消費者法制度パラダイムシフト重視🔒

新春特別インタビュー

◎「デジタル時代」「超高齢社会」の対応整備/悪質業者を「あわせ技」で行政処分

デジタル時代は生活に利便性を感じさせるものの、バラ色ばかりではない。孤立する消費者、その苦情の深刻化、物価高・増税、暮らしへの不安、重大な消費者被害の増加など、激しい環境変化を背景にますます不透明感がまん延しているのが実態だ。消費者行政には、被害防止と救済策など実効性ある対応策が、いっそう、強く求められてくる。安全・安心な消費生活に向け、どんな消費者政策が考えられるのか。ニッポン消費者新聞は、2025年を迎えるにあたり、消費者庁・新井ゆたか長官に施策方針や対応策を尋ねた。新井長官は、新たな消費者問題が次々と発生する中で、消費者の一番の利益につながる取組は何か、その視点を常に重視して業務を推進させていくとし、悪質業者排除への法執行、消費者への情報提供や啓発事業推進に向けた司令塔機能の発揮など、各種施策の重要性を強調している。悪質事業者に対してはそれぞれ各課・所管法による執行の「武器」を調整しながら「あわせ技」で処分を発動し、司令塔機能の発揮では中央・地方の消費者行政機関に限らず国際機関とも、より広く連携活動を推進していくと説明する。デジタル化・高齢社会進展による複雑・多様化する消費生活に対応した施策実施に向け、関係省庁、地方消費者行政、消費者団体及び事業者団体との連携・協働をめざした消費者政策に積極的に取り組む意向を表明している(インタビューは2024年12月13日)

新井ゆたか消費者庁長官

◎若い職員の意見・議論を反映 消費者基本計画素案を提示へ

高齢社会の進展の中での社会のデジタル化は消費生活にかつてない環境変化をもたらしています。消費者庁は長期的に講ずべき消費者政策の大綱を示し、その中で、重要施策を提示しながら、その実践に務めてまいります。

現在検討している消費者政策の大綱である「消費者基本計画素案」は令和7年度にスタートする第五期の基本計画です。デジタル化や高齢化が進み、ますますインターネット取引が拡大し、ネットメディアの多様化による商品・サービスの広告発信方法なども大きく変化しています。そのような中、デジタル技術は消費者に多くの利益をもたらす一方で、新たな課題も顕在化させているのです。

この社会情勢の変化に伴い、従来の消費者概念や消費者の「脆弱(ぜいじゃく)性」などの捉え方も変化してきました。第五期消費者基本計画素案では、このような環境変化を踏まえ、「消費者が信頼できる取引環境」「消費者力の実践」「誰一人取り残されない社会の構築」による安全・安心で豊かな消費生活の実現をめざした各種消費者政策に取り組むことを明記しています。まだ「素案」の段階ですが、パブリックコメントや消費者委員会から意見をお聴きした上で、令和7年3月には閣議決定していただければと考えています。

第五期消費者基本計画素案の特徴は、検討の過程で、より多くの若い職員の方々と議論を重ね、それら意見を基本計画素案に反映させていることです。デジタル技術が生活に浸透する中で取引環境の急速な変化に伴う課題にどう対応するのか、海外事業者との消費者取引が増加し、訪日外国人旅行者の消費拡大に伴う課題が提起される中で、このような消費生活のグローバル化にどう取り組むのか……(以下続く)

(本紙「ニッポン消費者新聞」1月1日新年特集号より一部転載)

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