新井ゆたか長官インタビュー 消費者法制のパラダイムシフト提唱🔒
- 2024/1/5
- くらし
新春特別インタビュー
◎デジタル対応踏まえ消費者被害防止策を整備
コロナ禍を乗り越えたあとも、消費生活には次々と新たな問題が押し寄せ、耳目を塞ぎたくなる事件・事故が相次いでいる。パンデミックが後押しした社会のデジタル化は、夢のような便利さを消費生活にもたらす一方、心を操るダークな技術も生み出し、インターネット通販トラブルの急増、デジタルに不慣れな高齢者被害の増加、投資詐欺や若者被害の深刻化など、消費者利益を侵害する例も急増している。コロナ禍、デジタル化、グローバル化は生活環境のダイナミックな改革を促しながら、その変化の行く末に一抹の不安感ものぞかせている。それに対処する消費者政策の重要性がかつてないほどに高まる中、消費者庁はどんな展望、方針を提示していくのか。ニッポン消費者新聞は、新年を迎えるにあたり、消費者庁・新井ゆたか長官に、変転定めない消費者問題、その取組への抱負を語っていただいた。新井長官は、消費者法体系の全般的検討の必要性を示唆しつつ、被害防止に向けた悪質商法に対する法執行の推進を強調、「詐欺的な“空き店舗閉店セール”のような勧誘手口がネットサイトに見られる中で、それら悪質商法にだまされない『消費者力』の育成が必要」と呼びかけている。地方消費者行政への支援にも力を入れ、「消費生活相談員の活動は消費者行政推進の前提」とし、地方や各省庁・関係機関、消費者・事業者との連携に積極的に取り組む、としている。
■消費者だます「閉店セール」「倒産セール」と称した勧誘手口の通販サイトも
消費者行政を総合的・一元的に担う消費者庁の役割は、消費生活での身近な問題を取り上げ、消費者一人ひとりが消費生活を豊かに、快適に送れるよう消費者の権利を尊重した様々な施策を講じていくことにあります。それに向け消費者庁は、法執行や行政指導により悪質業者・取引を市場から排除するとともに、消費者に向けては、悪質性を見抜く力、詐欺的勧誘を断る勇気などを育んでいただくよう、適切な情報提供・情報発進を積極化させていきたいと思います。
特に、インターネットを使った取引については苦情相談の割合が増加傾向にあります。なかなか減少しない詐欺的な定期購入商法に対しては、令和4年6月の改正特定商取引法施行によって通信販売分野として初めて消費者の取消権を創設しました。最終確認画面での法定表示を義務付け、消費者がそれら規定に違反する表示によって誤認し、契約を申し込んでしまった場合は、その申込の意思表示を取り消すことができるようにしました。
消費者のみなさんには、ぜひとも最終確認画面の表示に注視し、その画面を保存しておいたり、おかしいと思ったら立ち止まって契約したりしないなど、注意をはらっていただきたいと思います。きちんと表示していない事業者は信用できないことを消費者自ら自覚できるよう、今後も契約前にサイト画面を十分チェックするよう呼びかけていきます。
これまでフィッシング詐欺などの詐欺サイトは、日本語の使い方がおかしいという共通点がありました。しかし、現在は詐欺サイトであってもきちんとした日本語で表記され、一見して、詐欺かどうか判別できないものが増えています。
そういう実態を踏まえ消費者庁は、支払い方法が「代引き」のみと表示しているサイトの契約は避けたり、事業者のことを検索・調査したりして安心できるサイトかどうか契約前に念入りにチェックすることなどを呼びかけています。「閉店セール」や「倒産セール」と称して翌日には跡形も無くなっているような手口で、消費者をだます通販サイトもあります。だからこそ消費者による十分なチェックが必要で、それをしないまま契約することは、何の準備もしないでジャングルに分け入っていくようなものであること、などの注意点を掲げて消費者に役立つ情報発進に努めていきます。
■思想転換 消費者法制度のパラダイムシフトも提起
社会のデジタル化による生活様式激変の影響はインターネット通販に限りません。「取引」「表示」「安全」など消費生活全般にわたる分野に影響を及ぼしています。詐欺サイトの運営事業者が日本ではなく海外に拠点を置く例が多いことも裾野が広がっている消費者問題の特徴でしょう。
このように、大きく変化する生活環境を踏まえると、現行法制度の枠組みの中だけで個別課題ごとに対応する方法では十分な取組を展開していくことに大きな困難が伴うことが予想されます。消費者問題を個別にではなく幅広く包括的に捉えること……(以下続く)
(本紙「ニッポン消費者新聞」新年特集号より一部転載)
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